吐き捨てるように放たれた言葉は、こんなになった理由を話す気はないらしい。

だけど見るからに痛々しい傷だ。

家から絆創膏の1つでも持ってくれば良かった…なんて後悔も。


いや、そもそもコンビニに消毒液やら包帯やらが売ってるはずだ。



「…あの、なんか買ってき───」


「殴られてるとき、いっそ殺してくれって俺も一瞬思った」



その動きはピタリと止まった。

まだ自動ドアのセンサーには反応しないギリギリ。


だから彼の言葉を今は優先させることにした。



「…でも結局死ねなくて、こうやって座り込んでたら誰かさんがほうじ茶譲ってくれた」



……いや、譲ってはない。

貸しただけだ。

だからあなたはお金で私に返さなきゃいけないのだ。



「そのほうじ茶がさ、すげー美味いんだよ」


「……」


「な?」



な?…って。

私は飲んでないんですけど…。


そんなふうに笑いかけられて初めて、この人の顔立ちがハッキリ見えた。

集団リンチに遭ってしまったことが勿体ないくらい、だとしても様になってしまうくらい、悪くないルックスで。