モーリスにそう言われ、セシリオは頷いた。
 サリーシャは贔屓目抜きに、よくやってくれていた。まだ任せ始めて一ヶ月ほどだが、護衛で付き添った部下達からの情報によると、周りの評判は上々のようだ。むしろ、子どもなどは強面のセシリオが慰問に行くよりもよっぽど喜んでいるという。セシリオとしても、忙しい合間に慰問に行くのには限界があったので、正直とても助かっていた。
 
「そう言えば、出発は再来週でいいんだよな?」

 スコーンを食べ終えたモーリスから確認されるように念押しされ、セシリオはカレンダーを見た。フィリップ殿下の結婚式はおよそ一ヶ月後に迫っていた。当然セシリオ達も招待を受けているので、再び十一日間もかけて王都に行く必要がある。その出発は再来週の予定だ。

「ああ、再来週からまたしばらく領地を空ける。四週間弱で戻ってくる。何かあったら早馬に書簡を持たせて知らせてくれるか?」
「任せておけ。ところでセシリオ。お前、結婚した後もずっと仕事しっぱなしだろ? そんなに急がないで、少し羽を伸ばしてくるといい。奥様をどこかに連れて行ってやれよ。こっちは俺が仕切っておくから」