美しい文字でそう書かれているのを読んで、セシリオは表情を綻ばせた。

「クッキーか。うまそうだな」

 そうこうするうちに、モーリスがクッキーのラッピングを開けて食べようとしている。セシリオは慌ててそれを奪い取った。

「待て! これは俺が食べる」
「何だよ、突然」
「これはだな、孤児院に持っていく食品だから、問題はないかを確認するために俺が責任をもって全て食べる」
「今まで、そんなこと確認してたか?」

 腑に落ちない表情を浮かべるモーリスを尻目に、クッキーは三枚全部まとめて口の中に放り込んだ。サクサクとした中にカリコリと香ばしい食感と優しい味わいが口いっぱいに広がる。ごく普通のクッキーだが、サリーシャが作ったと思うと絶品に感じる。
 セシリオにクッキーを全部奪い取られたモーリスは、気を取り直したようにスコーンに手を伸ばした。
 
「孤児院の訪問は、もう全部奥様に任せてるのか?」
「ああ、支援施設と学校なんかも任せている。よくやってくれている」
「評判を聞く限り、そうみたいだな。よかったな」