モーリスの吐き捨てた台詞を聞きながら、セシリオは腕を組んだ。領地の境界付近で活動する窃盗団とは、なんとも厄介な奴らだ。しかも、相手は義賊を気取っており、あまり乱暴なことをするとこちらが領民から反感を買いかねない。

 どうしたものかと考え込んでいると、控えめにドアをノックする音が聞こえて二人は顔を上げた。壁の置き時計を確認すると、もうそろそろ午後三時になる。おそらく、侍女が軽食を用意に来たのだろう。そう考えたセシリオは、いつものように入室の許可を出した。

「入れ」
「失礼します」

 いつものように黙々と軽食を準備してゆく侍女が、今日は籠に入ったスコーンとは別にリボンで可愛らしく飾られたクッキーを置いていったことに気付き、セシリオはそれをひょいと摘まみ上げた。

「クッキー? わざわざラッピングをしているなんて、珍しいな」

 摘まみ上げた拍子に、ラッピングに添えられていた紙きれがはらりと床に落ちる。セシリオはクッキーを元に戻すと、床を滑って足元に落ちたそれを拾い上げた。

『先日孤児院を訪問した時に頂いた木の実を使って厨房の皆さまと作りました。今日の午後はこれを持って孤児院を再訪問する予定です。閣下のお口に合えばよいのですが。お仕事大変だと思いますが、無理をなさらないで下さいね。 サリーシャより』