電柱の外灯がぽつぽつと灯っている住宅街の道を、駅方向に向かって駆け出す。明かりの少ない夜道だったけど、駆け出してすぐに見慣れた背中を見つけることができた。

 よかった。まだ間に合った。


「朔くん!」


 気持ちの高ぶりのままに呼んだ声は、静かな住宅街に響いてしまって申し訳なくなった。しっかり声を拾った朔くんは、驚いた様子で振り返ると進行方向をこちらに変えてやってくる。


「美鈴、なんで……っていうか、病み上がりにその格好はダメだろう」


 言うや否や、朔くんは自分のコートを脱いで私の背後からかけてくれる。これだと朔くんが寒くなってしまうけど、私もさすがに寒さに耐えられないのでここはありがたく受け取っておく。代わりといってはなんだけど、持ってきた紙袋を渡した。


「コートと……クリスマスプレゼント、ありがとう。これ、私からのクリスマスプレゼントだからよかったら使って。初めて作ったから、あんまり着け心地はよくないかもしれないけど……」


 プレゼントの中身を察したらしく、「ありがとう、さっそく着けるよ」と朔くんは紙袋の中のラッピング袋を開封する。

 朔くんの手で取り出された青と白のストライプ柄の手編みのマフラーは、初めて編んだわりには頑張った方だと思う。……出来映えはさておきだけど。


「長さはどうかな? 足りるかな」

「たぶん大丈夫だと思う。ねえ、これ、美鈴が俺に巻いてくれる?」

「いいよ」


 マフラーを受け取り、少し屈んでくれた朔くんの首を覆うように巻いていく。

 編み目が不揃いでお世辞にも見た目は綺麗じゃないし、着け心地もごわごわしていそうだけど、朔くんは嬉しそうに目を細めて顔を埋めた。それだけで、初めて編み物に挑戦したことが報われる気がした。