視界に広がるのは、見慣れた自分の部屋の天井。

 なんだか、朔くんと一緒にいる幸せな夢を見ていたような気がする。でもどうしてだろう。ところどころ、現実味を帯びていたようにも感じる。

 私がそうであってほしいと思っているだけなのかな……。

 そう考えているとふと視界の端にちらつく赤色に気付き、視線を天井から枕の隣に移した。そこには寝る前にはなかったものが置かれていて、はっとしながら掛け布団を剥いで体を起こす。

 クリスマスプレゼントらしきラッピングがされた小さな箱。そこにかけられたリボンの隙間には、小さなメッセージカードが挟まれている。


『Merry Christmas! 元気になったら、最高に楽しいデートをしよう。お大事に』


 誰から誰へのメッセージなのかなんて、考えるよりも先にわかった。
 このクリスマスプレゼントは、サンタさんを届けてくれたわけじゃない。私が世界一大事で大好きな――。

 そこまで思い至って、さっき目覚める直前に聞いた声を思い出した。あれは、本当に夢だった……?

 いてもたってもいられない衝動に突き動かされて、パジャマの上にカーディガンを羽織ると、部屋の隅に置いてあった紙袋を持って慌てて1階に下りた。


「おっ、お母さん!!」

「あ、目覚めた? 体だるいのは平気?」

「うん、それは大丈夫。それより、朔くん来てなかった?」

「来てたわよ。でも美鈴が寝てたから、今さっき帰ったところで……」

「ちょっと追いかけてくる!」


 お母さんの説明を途中で遮ってそう告げると、私はすぐさま玄関に向かって外に出た。瞬間、突き刺すような冷気に一瞬で体温を奪われる。
 カーディガンを羽織ったぐらいでは、12月の外では明らかに薄着だった。しかも昼過ぎに眠りについてからそこそこ時間が経っていたらしく、辺りはとうに日が暮れている模様だ。