ずっと、恋人でいて。ずっと、私を好きでいて。離れていても、心はずっとそばにいて。

 一度口に出してしまうと、朔くんへのお願いのようなわがままは尽きない。

 迫る受験に向けて気を張っている朔くんの前では絶対に言えなかったけど、今だけはなにを言っても許されたいと思ってつらつらと言葉を連ねてしまう。

 私が、どれよりも一番思っているのは……。


「……朔くんと離れるの、寂しいよ」


 私の手を握る朔くんの指先がわずかに震える。


「……俺だって、寂しいよ。でも、美鈴が会いに来てって言うならいつでも何度でも会いに来るし、俺が会いたいときにもすぐに来るからさ。……だから、ちょっとの間だけ頑張ろう。いつか長い先の時間を、これからもずっと一緒にいるために」

「朔くん、なんだかそれ……プロポーズみたいで嬉しいよ」


 半分本気、半分冗談でそう言うと、朔くんは案外そのつもりだったのか、顔を真っ赤にしながら唇をきゅっと結んでいた。告白の返事をしてくれたときと、そっくりそのままの表情。私も「えっ」と固まってしまう。


「……ちゃんと、そのときが来たら美鈴に言うよ。ずっと、一緒にいるんだから」


 最終的に朔くんは誤魔化す方向にシフトチェンジしたようで、そんなふうに締めくくられてしまった。

 私は朔くんと繋いでいる手とは逆の手を布団の中から出して小指を差し出す。


「じゃあ、約束ねっ!」

「うん、約束」


 小指を絡めながら、二人で約束を結ぶ声がメロディーに乗って重なる。幸せな夢だと思った。





「――美鈴、早く元気になって。メリークリスマス」



 意識の遠くでそんな朔くんの声を聞いたような気がしたのをきっかけに、一気に微睡みから目が覚めた。