私はすでに推薦入試で合格が決まっている地元の短大へ、朔くんは年明け以降の試験次第だけど志望校はどれも県外の大学だ。
 普段から成績が優秀で今もずっと予備校に通って頑張っている朔くんなら、きっと自分が一番行きたいと思っている場所へ行けるだろう。

 それぞれ目指すものがあるから進路が分岐するのは当たり前だけど、私はそれに一人で不安を募らせてばかりいた。

 付き合ってから一年間、ずっと一緒にいた。学校でも会えるし、休みの日だって会おうと思えば会える距離にいた。
 でも、それが簡単には叶わなくなる。電話もトークもできるし、一生の別れになるわけじゃないってわかってる。

 それでも、不安なものは不安だ。朔くんと一緒にいない日々に、いつか慣れてしまいそうな自分が嫌だった。朔くんも私がいない日々に慣れて、お互いの気持ちが季節の流れに乗って薄れてしまわないか、嫌な未来ばかりを考えてしまう。

 ……だから、せめて今だけは、そばにいられるうちに、大切な宝物を増やしておきたい思いがあった。

 付き合って一年経つ今日を、朔くんと目一杯楽しんで過ごしたかった。来年もまた一緒にクリスマスを過ごせるように、過去になる前の“今”のひとつひとつを心に刻んでおきたかった。

 ふと冷静になると、まるで別れる前の思い出作りをしているみたいだと自嘲したりもしたけど、これはこれから遠距離恋愛になる前の気持ちの土台作りだと無理矢理自分に言い聞かせたりもした。揺らがない心の準備だと。

 それなのに体調を崩してクリスマスデートを台無しにするというへまをやらかしてしまうのだから、本当に自分が嫌になってしまう。

 おまけにいつも朔くんの前では遠距離への不安とか寂しさを出さないように必死に強がっていたのに、夢の中の朔くんには情けないところばかりを見せてしまう。