朔くんの声色には誠実さが滲んでいるように聞こえるのに、試すようにしつこく何度も聞いてしまう。


「……ほんとうにっ?」

「本当だよ」

「来年も、これからもずっと、恋人でいてくれる?」

「もちろんだよ。美鈴が俺のこと嫌いになっても……いや、違うな。嫌われないのが一番いいけど、万が一嫌われたとしても、俺はずっと美鈴が好きだよ。頑張って、また好きになってもらえるように努力だってするよ」

「……私だって、ずっと朔くんが好きだよ。絶対、嫌いになんてならないよ」


 だから、朔くんがそんな努力をする機会はきっとこないよ。それを伝えたくて、繋がれている手に私からも力を込める。

 だけど……私はどうだろう。もし朔くんが私を好きじゃなくなる日が来たら、再び振り向いてもらうためにどれだけ頑張れるだろう。

 離れてしまった手に、どれだけ手を伸ばせるのだろう。想う気持ちが変わらない自信はあるくせに、背中を向けられてしまったあとに追いかけ続ける勇気を持ち合わせていない。

 片思いのときは、当たって砕けろ精神で告白だってできたのに。
 好きな人が自分を好きでいてくれる幸せを知ってしまったら、それを失う恐怖で上手く立ち回れない。気持ちが離れてしまったら、どうすればいいのかわからない。

 そんな不確かだけど訪れてしまいそうな可能性に、私はずっと怯えてしまっている。


「朔くん」

「ん?」


 小首を傾げて、私の言葉を待ってくれている。その表情が優しくて、なんだか泣きたくなった。


「毎日学校で会えなくても、休みの日とか会いたいときにすぐに会えなくなっちゃっても、私のこと好きなままでいてくれる……?」


 高校3年生の私たちは、春には別々の道へと進む予定だった。