「ごめんね。欄干にぶつからなかった?痛い思いさせちゃったかな? 」
慌ててブレザーに汚れがないか確認する。なんだか悪くてぱたぱたと背中をはたくと、地をはうような低い声がした。
「お前みたいなのが、ぶつかったところでよろけやしない」
ぷい、と不機嫌そうに顔を背けられた。汚れてはいないのだけれど、知らない人間に体を触られるのが嫌だったのかもしれない。
「あ、ごめんね。弟がいるから、つい世話を焼いちゃって。あの、私雪代と言います…」
「ナンパなら間に合ってるんだけど」
「……あ、いや、そうじゃなくて…怪しい者じゃないって言いたかっただけです。」