花曇り。

桜の咲く頃の春の空はくすんだ空の色。

明るくて、それでいてくすんだ空は、明るすぎると飛んでしまう桜の色を留めている。

真っ白に飛ばずに、柔らかな薄紅色を際立たせる。

「すっごく…いい色合い」

橋の欄干からめいいっぱい、腕を伸ばしてスマホのカメラをかざす。少しでも近くで、少しでも綺麗に。

散りはじめた花びらは筏をつくって流れていく。この景色のどこを撮っても、最高な被写体だった。

桜も、川の花筏も、橋の欄干も。

はたと気づいて、真っ赤な朱塗りの欄干もこの色合いに映えるだろうと、にじにじと後ずさる。