私たちは、こことは違う、私たちのようなサイズの人間ばかりが暮らす世界から、なぜかここへ迷い込んだことを告げた。

「そうか。しかし、ここでは、お前達のような者は他に存在しない。(つがい)で助かったのは、不幸中の幸いだったな。怪我が治ったら、心置きなくここで繁殖するといい」

繁…殖⁉︎

この人、何を言ってるの⁉︎

「いえ、それは……
 俺には、故郷に恋人がいますし、彼女にも思う人がいるかもしれません」

白石さんが慌てて答える。は

そうか。白石さん、恋人がいるんだ。

いえ、もしいなかったとしても、好きでもない人となんて…


あぁ、そうか。

国王にとって、私たちは、小さな犬猫と一緒なんだ。

珍しいペットを見つけたから、数を増やしたい。
ただそれだけなんだろう。

「そうか。それもそうだな。俺自身が結婚から逃げ回っているのに、お前達にそれを強要するのは、おかしなことだな」

それを聞いた瞬間、ふっと笑いが込み上げる。

この王様、結婚が嫌で逃げてるんだ。

それがなんだかとても人間くさくて、おかしくなる。

くすくすと笑う私を見て、王様は首を傾げた。

「何がおかしい?」

「いえ、ごめんなさい。王様も私たちと変わらない人間なんだと思ったら、なんだかおかしくて…さ」

元々、笑い始めると止まらない私は、くすくすと笑い続ける。

「由良は、笑うとかわいいな。ずっと笑っているといい。ここでは自由にしていいから、何か不自由があれば、遠慮なく言うんだぞ」

王様はそう言うと、大きな手でそっと私の頭を撫でる。

1メートル近くありそうな手のひらで撫でられるのは、正直、ちょっと怖い。

そのまま、潰されてしまいそうな恐怖がある。

それでも、首をすくめながらも、甘んじてそれを受けると、不思議な心地よさがあった。