「俺ね、12月に入ったくらいから、手が上手く動かなくなって、検査したら、脳に腫瘍があって、神経を押してるせいなんだって。
 おれ、ピアノ上手く弾けなくなった。
 奏は、俺のピアノが好きだって言ってくれたのに、俺今、弾けない。
 イライラしてて、喧嘩したりして。
 奏に合わす顔がなかった。」
私は、ボロボロ泣いてしまった。

「そんな顔しないで。」
涙を拭いてくれた。

「楽都くん、苦しんでたのに、何も知らなくてごめんなさい。」

「謝らなきゃいけないのは、俺の方。
 ごめん。嫌いになんてなってない。
むしろ会いたくて会いたくて仕方なかった。でも、こんな俺じゃあって思ってた。会いにきてくれてありがとう。」