私たちは、トンネル水槽や大水槽を後に周ることにして、先にイルカショーが行われるスタジアムへ移動した。

 きゃー、ここもなのっ!?

 スタジアムも、『バレンタイン & ホワイトデーイベント』仕様になっていた。

 まだショーは始まっていなかったけれど、BGMにラブソングが流れている。

 正面後方の席がまだ空いていた。

「この辺でいい?」

 護が私に確認してからベンチ席に座った。

 私も護の隣に腰かけた。

 しまった! 距離感を間違えた!!

 近くに座り過ぎて、護の腕に触れてしまう。

 座り直した方がいい?

 でも、そうすると、護のことを嫌ってるみたいじゃない?

 どうしよう…どうしよう……

 そのとき、護が私を見下ろして、ほほえんだ。

 ああ、もういいやっ!

 私はこのまま、護に寄り添っていることにした。

 …だって、離れたくないんだもん。

 このスタジアムの雰囲気にのまれて、私はおかしくなってしまったんだ。そうに違いない。