エスカレーターを下りて少し進むと、突如、暗いエリアに入った。水槽の照明だけを頼りに歩く。

 水の中では、色鮮やかな熱帯魚たちが優雅に泳ぐ。

 最初のこの展示エリアは、通路が狭くて混みやすい。

 おまけに、小さな熱帯魚をよく観察したいのか、小さな子どもが私たちの間に割り込んできたりもした。

 魚にばかり気を取られていると、簡単に護を見失ってしまいそう。

「なあ、玲奈、下心じゃなくって…いや、ぶっちゃけると、それも少しあるんだけどさ…手つないでもいい?」

「下心あるのっ??」

 でも、本当に歩きにくかった。

 それに、言いにくそうな護からは、いやらしさを全く感じなかった。

 だから、遠慮がちに差し出された手を、自然に取ることができた。