「あれ? みんな、家族にあげるだけ? 好きな人にあげないの?」

 3人は、『うーん』と渋い顔をした。

「私は完全に一方通行だから、チョコはあげないつもり。特に手作りなんて、迷惑になりそう」

 1人はそう答えた。

「私にはハートのガトーショコラを作らせようとしておいて、それってどうなの??」

「佐藤君はうれしいと思うよ。それに、材料が余っちゃうともったいないでしょ?」

「うん、うん」

 1対3で勝てるはずもなく、勧められるがままに、ハートの型に沿ってクッキングシートを敷き、材料を入れてしまった。

「これにはチョコペンでメッセージ書けば?ベタに『すき』とか『LOVE』とか」

 恭子がニヤニヤしながら、何色ものチョコペンを見せびらかすようにした。

「書かない、書かないよ!」

 私はミックスナッツとドライフルーツを散らした。