知らない振りをしたい気もしたけれど、確かめずにはいられなくなった。

「…なあ、オレのクラスの村田って知ってるよな?」

 玲奈の顔が凍りついた。

「あいつにバレンタインチョコあげんの?」

「ええーっ! あげないといけないの? あれって、そういうことなのかな?? どうしよう、護!!」

 ん? 村田から聞いていた様子とは、ずいぶん違うみたいだな。

 ほっとしている自分に気づいて、村田に悪い気もした。

「バレンタインデーの前日に会うって聞いたけど?」

「それって決定しちゃってるの?」

 玲奈は、ほぼ泣きそうな声になっている。

「村田は『会う約束した』って言ってたけど?」

「そんな…。私、断りたくって、『その日は、友達とバレンタインチョコを作るかも』って言ったの。そうしたら、『その後でいいから』って、強引で…」