他の運動部のジャマにならないように、運動場を避けて、校舎と体育館の周りを3周走れば、今日も部活が終わる。

 水泳部のくせに、1年のうちの4分の3は泳げない。詐欺みたいな名前の部活だ。

「佐藤ー、今日も残るのか?」

「ああ、うん。先に帰ってくれよ」

「なー、そろそろ教えろよ。ここ最近、毎日、誰を待ってんだよ」

 クラスも部活もいっしょの村田 裕一郎が聞いてくる。

「いきなり外見に気遣い始めたし、女子なんだろ? なあ、絶対そうだろ?」

 正門のところで堂々と待っているオレを目撃している人間も、いっぱいいるんだ。隠すのもおかしいだろうな。

「そうだけど」

「認めた! もしかして彼女か?」

「違うよ」

「でも、好きなんだな? 毎日、待つなんて、絶対そうだろ?」

 そんなことを聞いてどうしたいんだ??

「そうだよ」

「佐藤、やっぱりかー!」

 他人の恋愛だ。いちいち大声を出すようなことでもないのに、と思う。