「文集って形にされるんだから、ヘタなこと書けないし、テンプレでいいんだよ」

　そうだと分かっていても、文章を書くのが苦手な私にとっては、大変なことなのだ。

　手紙を苦にしないお母さんも、作文を軽く扱える護も、私とは違う頭の構造をしているに違いない。

「それよりも、バレンタインだろっ！」

「それよりも…って、作文の方が重要案件だよ。それに、去年、『義理チョコなんていらない』って言ってたよね？」

「違う。オレは、『義理チョコじゃあなー』って言っただけ。だって、玲奈の本命がほしかったから」

　ぶっ！！

「な、何言い出すの！？　こんな公道でっ！！」

　1年前にも私から本命チョコをもらいたかった？？　おかしな言動はつい最近、始まったと思うんだけど…。

「今年も義理チョコしかあげられないわ。それなら、いらない？」

「いや、ほしい。1番ほしいのは玲奈からの本命チョコで、2番目は玲奈からの義理チョコ。他のチョコはいらない！　…って言ったら、マズいな。母さんからのチョコは、ランキング対象外ってことにしておくか…」