「ツヤ、お父さんは色々することがあるのよ。お母さんは何も気にしてないわ。二人が手伝ってくれるだけで充分助かる」

アサギが優しい声で言い、いつもなら落ち着くはずの母の声にツヤは心を激しく掻き乱される。それは、一応父親であるミツヒデに対する嫌悪と怒りが沸き起こったからだった。

物心ついた頃から、ミツヒデとあまり話した記憶がない。カスミやツヤが声をかけても無視をされたり、面倒くさそうな返事ばかりをされる。そして、アサギと楽しそうに話したりしている時、ミツヒデは恐ろしい形相でこちらを睨んでくるのだ。

そのため、ツヤは気付いている。ミツヒデが愛しているのは「家族」ではなく妻である「アサギ」だけなのだと。子どもは付属品、もしくは邪魔者と思われているに違いない。そのためツヤは、幼い頃からミツヒデが嫌いである。

三人も揃えば、朝ご飯はあっという間にできあがる。できた料理をツヤとカスミがテーブルに並べ、アサギがミツヒデの自室まで彼を呼びに行く。