「あなた、ご飯ができましたよ」

「そうか。アサギの作るご飯はおいしいから、温かいうちに食べないとな」

ツヤとカスミの前では決して出さない明るい声が聞こえ、ツヤはムッとした表情を見せる。そんなツヤを見てカスミは困ったように笑い、ツヤの頭に触れた。

「ツヤ、そんな顔をしないで。これから食事の時間なんだから」

「自室に籠っていたいならずっとそうしていろって姉さんは思わないの?食事ができた時だけ顔を出して、普段は部屋にずっと籠って、母さんを部屋に呼び付けて、ほんと何様!?」

子どもが嫌いなくせに何故教師として働いているのだろうか、ツヤがミツヒデに抱く一番の疑問である。

「お父さんには、きっとお父さんの事情があるのよ。それにお父さんだって心の中ではきっと、私たちのことを想ってくれているはず。だって家族だもの」

そんなことあるわけない、そうツヤは言いたかったものの、カスミのどこか寂しげな表情を目にすると口は開かなかった。そこへ手を繋ぎながらミツヒデとアサギが現れ、朝ご飯の時間が始まる。