農園でゴブリンたちと戦い、悪魔と、そして謎の男性を目にした時に豹変してしまったツヤ・シノノメの姿にイヅナ・クリアウォーターは戸惑いながらも、意識を失ったツヤの名前を呼び続けていた。

「ツヤさん、ツヤさん、しっかりしてください!」

「イヅナ、あんまり揺さぶるなよ。危ねぇだろ」

レオナード・ロマーナがイヅナの手を掴み、ツヤから離される。だが、イヅナは意識を失ったままのツヤが心配でたまらず、ジワリと目元が熱くなっていくのを感じた。

「……とりあえず、ツヤさんをギルベルトくんの屋敷へ運ぶよ」

エイモン・ウィーズリーがそう言ってツヤを抱き抱え、その隣にいたチェルシー・モールバラが式神をギルベルトの元に送る。

「妖のお医者さんはいないけど、ツヤが今まで開発してくれた薬を使いましょうか」

チェルシーが薬をツヤに投与し、エイモンがなるべく体を揺らさないように気を付けながら歩き出す。それを不安げな瞳でイヅナが見ていると、チェルシーが近付き、頬を優しく包まれた。