フラワーカフェの袋を手に下げた2人が帰って来た。

 ランチボックスの中にオレンジや、白、紫の花が散りばめられていて、とてもおしゃれ。

 ほのかに香る甘いスパイシーな香りに包まれながら、その場が撮影会状態になる。


「食いもん可愛いって分からんねー。うまそーじゃないんだ。てか、その花いる?」


 不思議なものを見るような目をする下津くんに、すかさず。


「これはエディブルフラワーって言って、食べられる花なんだよ。味はもちろん大事だけど、料理って見た目の美しさも重要だと思うの。女の子は特に、それだけで幸せな気分になれちゃう……から」


 途中で恥ずかしさが込み上げて来て、小声になっていく。

 料理やお菓子のことになると、つい熱が入ってしまう癖があるから。

 さっきまでの勢いはなくなって、シューと空気が抜けたように大人しくソファーへ座り込む。


「花いらねって言って、なんかごめんね? 好きなんだね、料理」

「……うん」


 改めて聞かれると、なんだかくすぐったく聞こえる。

 自分にとって特別なものでも、誰かにとっては素通りするものだったりするから。


「好きな物を好きって言えるの、すごいことだよね」


 湊くんに褒めてもらえた。それだけで、話して良かったと思える。