癒されるBGMで英語の復習が始まった。

 音楽を流すことによって、リラックス効果が現れて集中力が高まるらしい。

 その効果か定かではないけど、気付けば時計は12時になろうとしていて。勉強を始めて1時間半も経過していた。


「なんか腹減らない?」

「休憩しようか」

「ピザでも取る?」


 2人が昼食の話をしていると、比茉里ちゃんがつんつんと肩を突き、顔を寄せる。


「質問、ほとんど下津くんにしてたじゃん。なんで星名くんに聞かないのよ」


 耳打ちするほどの小さな声。

 初めに質問した1回だけで、あとはどうしても勇気が出なくて。

 意識していない人の方が、話しかけやすかったりするから。下津くんへ逃げてしまった。

 これでも男子の耐性をつけるために、頑張ったんだよ?

 肩を落とす仕草に、そうかそうかと比茉里ちゃんが頷く。


「下津くん。一緒にお昼買いに行かない? 来る時に良い店見つけたんだ」

「あん? ピザはどうするよ」

「ダメ?」

「別にいいけど。家主が留守にしていいの?」


 間髪入れずに、「行ってらっしゃい」と湊くんの微笑みが飛ぶ。

「後は頑張って」と唇を動かして目で合図すると、比茉里ちゃんは後へ続いて部屋を出た。

 そんな分かりやすいことをされたら、湊くんに勘付かれちゃうよ。