「ぶっちゃけ下津くんって、ボンボンの息子だったりする?」


 ふわりと湧いた素朴な疑問を、生卵を割るより容易い調子でさらっと口に出来るなんて。

 つくづく比茉里ちゃんを尊敬する。


「え……っと、ふたりとも。下津リゾートって聞いたことあるかな?」

「もちろん知ってるよ。有名じゃん」


 下津リゾートと言ったら、ホテルや旅館、娯楽施設が日本全国にあるリゾート運営会社。


「え、ちょっと待って。下津って、まさかあの下津なの?!」

「う……そ?」


 甲高い声が狭い個室にこだまする。

 否定も肯定もせず、湊くんはニコッと微笑んだ。


 長い前髪を結い上げて、黒いスウェット姿の下津くんが家のドアから顔を出す。

 学校とのギャップがあり過ぎて、思わず凝視してしまった。

 この格好を見ていると、さっきしていた話の実感が湧かない。

 下津リゾート社長の息子だったなんて。