戸惑う表情とは裏腹に、そうかもしれないと頭は小さく頷いた。


「美少年で頭も良くて優しい。外面は全てパーフェクト。そんな完璧な人間なんて、この世に存在しないと思うんだよね」


「……ん?」と首をかしげると、比茉里ちゃんはさらに声を潜めて言う。


「みんなの知らない別の顔があるとみた」

「別の……顔」

「まあ多かれ少なかれ、みんな隠してる部分はあるだろうけど。星名くんは別格な匂いがすんのよ」


 うさんくさい占い師みたいな口調で、比茉里ちゃんはドヤっとした表情をする。


「実はドSな変態くん。もしくは、一途だけどストーカー気質な病み男子。それから」

「比茉里ちゃん……漫画の読みすぎだよ」


 ここで止めておかなければ、湊くんが汚名を着せられてしまう。


「妄想が1人歩きしちゃって。でもこれが全てハマるもんだから。あ、ごめんね。それじゃあ困るよね」

「もうっ」

 頬を膨らませて怒った真似をすると、比茉里ちゃんの楽しそうな笑い声が空に響いた。