「ダメ元で下津くん誘ってみたら、すんなりオッケーされちゃって。結奈ちゃんが男子に慣れるいい機会だとも思って。秘密にしててごめんね?」


 テヘッと舌を出して、愛嬌でその場を凌ぐ少女漫画の登場人物のような仕草。

 悪気がないと分かっているから、こうゆう時は苦笑するしかない。

「事前に言ったらガチガチに緊張して、挙句にドタキャンしかねないでしょう?」と言われて、納得してしまったもの。

 だけど正直、驚きを通り越して引け腰になっている。

 湊くんが来ると知っていたら、もっとお洒落もしたかったし、髪型もちゃんと考えたかった。

 それに、男の子の部屋なんて弟といとこくらいしか入ったことがないのに。心の準備がまだ出来ていない。

 頭の中にいろんな思考が飛び交うけど、向日葵みたいに笑う比茉里ちゃんを見ていたら何も言えなくなる。

 全部、私のためにしてくれたことだから。

 ふわふわと考えていると、腕をグッと引き寄せられて耳元で(ささや)きが聞こえてくる。


「星名くんを知るチャンスかもしれないよ」