「おはよう」

 背後から男の子の透き通るような綺麗な声がした。

 手のひらがしっとりと湿り出す。

 意を決して振り向いた先には、ゆったりとしたグレーのTシャツに黒の細身のパンツ。私服姿の湊くんが立っていた。

 ああ……背に太陽があるからなのか、いつもに増して眩しく感じる。


「星名くん、おはよう! ほんとに分かりやすい所だね」

「派手なカフェだから目印になったでしょ」

「ココア交換しておけば良かったって、内心冷や冷やした」


 台本があるかのように会話する彼らを、私は(はた)から見ている。

 この状況を把握していないのは、どうやら私だけらしい。

 少し離れたところで、湊くんが電話を掛け始めた。


『どうゆうことなのか説明して下さい』

 無言の涙目で訴えかける私に対して、比茉里ちゃんが顔の前で手を合わせてごめんポーズをした。