ピンクの壁とブルーの扉が目を引くその建物には、〝フラワーカフェ〟と書かれた木目の看板が掛かっている。

 何種類もの色鮮やかな花が飾られた外観。

 店内も花で埋め尽くされている様子がガラス越しから見えた。

 まるで、乙女の夢を詰め込んだような空間。


「ここ、すごく可愛い! さすが比茉里ちゃん!」


 目を宝石のように輝かせて店へ入ろうとすると、こっちこっちと手を引かれた。


「……こっちって?」

 比茉里ちゃんの指は、カフェの隣を指している。石張りで感じの良い高層マンション。

 中から身なりの上品な年配女性が出てきて、私たちはその人の後ろ姿を目で追った。

 明らかに人の住んでいる建物だ。


「いかにもなマンション。もしかしたら、億ションかもな……。こんなところに住んでるなんて、まさかボンボンの息子じゃないでしょうね」


 どこぞの探偵のように顎へ手を当てるポーズをして。ぶつぶつと独り言を呟いている。


「……誰の、何の話?」


 なんだか胸が騒ついて、喉がゴクリと鳴る。

 まさか、まさか……だよね。