約束の日曜日、午前10時。ほどよく混み合った桜小町駅。

 フリル付きのグレーのTシャツに、黒のリボンが付いたキャミを重ね着して、ボトムはダメージデニムを合わせた。

 日差しが気になるため、帽子も被って。

 比茉里ちゃんの姿を確認して、車両へ乗り込む。

 ハイウエストのデニムショートパンツに、大きめのパステル紫のTシャツをインした、黒いキャップ姿。

 足元のスニーカーが、よりカジュアルさを強調している。

 挨拶を交わして帽子を取った私の髪を、すかさず彼女が指差す。


「そのバレッタって、フィル・ルージュのじゃん! おしゃれな形だね」

「……うん」


 電車と一緒に、少しだけ心臓が揺れる。


 ーー地味すぎて似合ってない。バレッタだけ浮いてる。


「大人可愛い。結奈ちゃんにすごく似合ってるよ」

「……ありがとう」


 頭の声を掻き消すくらい、比茉里ちゃんの言葉は心強くて。付けてきて良かったと思わせてくれた。

 あれから、バレッタをすることに自信が持てなかったから。