どうしてかな。普通に話しているよりも、小声の方が耳を突くように聞こえてくるのは。

 くすくすと笑う効果音が、とどめを刺す。

 自分のことを言われるのは、まだ我慢出来る。聞こえない振りをすれば良いから。

 でも、私のために選んでくれたバレッタが似合わないだなんて、湊くんに申し訳なくて。恥ずかしくて。

 口をへの字にして、膝の上の拳をぎゅっと握りしめる。

 考えたくないのに、2人からもそう思われているんじゃないかと勝手に妄想が膨らんで、泣きたくなる。

 すると、まだ動く電車の最中、湊くんが立ち上がった。突然のことで、下津くんと同時に彼を見上げる。


『次は帝〜帝です。お出口は右側です……』

 車内アナウンスが流れて、湊くんの降りる駅だと気付く。

 降りるために、立ち上がったのかな。

 落ち着いた表情はいつも通りだけど、何かが違う。表情の見えない目に、ドクンと心臓が鳴る。

 初めて見る湊くんの顔ーー。