クロスシートの座席を対面させて、窓側に下津くん、その隣に湊くんが座る。

 通路側へ座ることに気が引けて、下津くんと向かい合わせになる奥の座席へ腰を下ろした。

 男子と座席を共有することは、やっぱり慣れない。

 この空間のどこを見たらいいのか分からなくて、とりあえず窓の外へ視線を向ける。


 ーーねえ、あの子。なんであの2人と帰ってんだろ?

 ーー友達ってカンジには見えないよね。

 ーーあっ、アレじゃない? ほら、前に噂になってた。

 ーーああ、地味って言われてた子ね。


 通路を挟んだ反対の席から、女子生徒のひそひそとした話す声が耳を刺す。

 背筋が凍るような感覚と、足の震えに襲われて。見えない視線に動けなくなる。

 湊くんと下津くんは、女子に人気がある。一緒に行動したら、目立つことは分かっていた。

 この場は大人しくしていよう。良からぬ噂でも立てられたら大変。


「その髪飾りってさ」

 こちらをじっと見る下津くんが、自分の耳元をとんとんと示す。

 すると、湊くんが少し気まずそうに視線を伏せた。