電車を待つ最中、鞄からこっそりと小さな花柄のポーチを取り出す。

 ファスナーを開けて出したのは、フィル・ルージュというブランドの髪飾り。

 シャープな輝きがあるアーモンド型のビジューと、大小のパールがあしらわれた華奢だけど華やかな大人っぽいバレッタ。

 コンテストの日、湊くんがくれた私だけの特別賞。

 ピアスや髪の装飾類は学校で禁止されていている。だから、電車に乗る前だけ、こっそりと付けているの。

 このバレッタを髪に留めると、胸が締め付けられてキュンと狭くなる。

 ふわふわ気分が舞い上がって、楽しくなって。思わず頬がほころんでしまう。

 偶然会えるかもしれないという、ジンクスも兼ねて。


「あれ? 結奈ちゃんじゃーん」

 チャラチャラと手を振って近付いて来る下津くんの後ろに、湊くんの姿が見えた。

 コンテスト以来、まともに会ったのはこれが初めて。

 緊張のなか視線が合う。微笑みが返ってきて、胸が破裂しそうになった。

 ほら、バレッタの効果が現れた。