「なんだか怪しい匂いがする。それ、ほんとに大丈夫?」


 くんくんと鼻を動かす真似をして、比茉里ちゃんが私の周りを偵察する。まるで探偵か刑事にでもなったみたい。

 スイーツコンテストの話をしたら、突然表情を険しくさせて、ずっとこの状態。

 何か腑に落ちないことがあったのだと思う。


「私でさえコンテストの場所なんて知らなかったんだから。やっぱり、星名くん変だよ。絶対、偶然なんてありえないから」


 購買で買ったホットドッグを持ったまま、そんなことを言い続けている。

 中庭のベンチに座ってから、私は苦笑するばかり。


「確かに驚きはしたけど、嬉しかったよ? それで、怪しいって?」

「うーん、ストーカー?」


 飲んでいたバナナミルクが気管に入って、ゴホゴホと咽せる。


「まさか! 私なんかにするわけ……」


 言いかけた言葉が詰まった。

 ストーカーと言えば、電車で会った以来、たまに藤波くんの視線が気になる時がある。

 ふとした拍子に目が合ったり、それも睨んでいるような。


「本命のお菓子を代わりに受け取ったり、なかなかしないよ。絵のモデルも頼んでるし、何かあるとしか……」