「少しハプニングはあったけど、みんな精一杯やったの。協力して、励まし合って……いい思い出になったよ」


 泣きたい気持ちを抑えて、気丈とした態度を演じた。

 入賞はしたかったけど、それだけが重要なわけではない。素敵な仲間と出会えた時間は、かけがえのないものだったから。

 二度と手に入れられない大切な思い出をもらえた。


「じゃあ、結奈ちゃんには僕が特別賞あげる。ほんとによく頑張りました」


 子どもを褒めるような手が頭にぽんぽんと乗せられて。優しく髪に触れた指は、耳をそっと露わにする。

 熱を帯びた耳たぶが剥き出しになって、恥じらいが増す。

 湊くんが近すぎて顔を上げられない。

 パチンと、耳元で何かが鳴った。高く弾けるような音。

 違和感を感じた髪には、髪飾りが付いていた。


「ほんとは、お菓子のお礼なんだけどね。クッキーもケーキもおいしかったよ。結奈ちゃんの作るお菓子って、優しい味がして好きだな」

「あ、ありがとう。すごく……嬉しい。大切にします」