戸惑っている私の隣へ周さんがやって来て、さらっと軽く肩を抱き。

「うちの可愛い部員にちょっかい出さないでくれる?」


 騒つく調理室。
 思わず頬を染め上げる私になんてお構いなしで、周さんはさらに体を密着させた。女の子とは言えど近すぎる。


「困らせるつもりはなかったんだ。ごめんね」


 美術部員を引き連れて帰って行った星名くんは、心残りという顔をしていた。

 お菓子作りは幼い頃から得意だったけど、バレンタインも誕生日でさえも誰かから求められたことなんてなかった。

 だから、驚いたけど少しだけ桜が咲いた気分になった。自然と頬が綻ぶような優しい感覚。