「お疲れさま。ついさっきココア見たから返事出来てなくて、ごめんね。ケーキすごく可愛かった」


 優しい表情に胸の奥がキュンと狭くなって、ギュッと締め付けられたように苦しくなる。

 会場から出てきた他校の生徒たちが、ちらちらと目で追いながら通り過ぎていく。


「…………ダメでした。もしかしたらと思ったけど、入賞出来なかった」


 目の前が霞んでいく。

 高校最後のコンテストだったのに、結果を残せなかった。

 だから、湊くんと距離が縮まるというジンクスも上手くいかない。

 結局、私は何をやっても中途半端で、自分を変えることなんて……。


 ーー人って、そう簡単には変われないからね。少しずつでいいんじゃない?


 ふと脳内に声が舞い降りる。下津くんが励ましてくれた日のこと。一歩踏み出せた自分。

 そして、もうひとつの声が胸に沸き上がって、小さな勇気を作る。

 出来る限りの笑顔を作って、暗くならないように。