6月の第3日曜日。高校料理部スイーツコンテスト当日。

 集合時間20分前。予想以上に早く着いて、そわそわと落ち着きなく周さんと高見ちやん、拓殖先生を待つ。

 他高の生徒数名が、すでにロビーで受付を済ませる様子が見られた。

 一気に緊張が押し寄せてくる。

 ーーピロロンと、さっきからココアトークが鳴っていることに気付く。スマホの画面には、家族のグループトークが連投されていた。

 『頑張って』『緊張し過ぎるな』という応援の言葉が連なって、比茉里ちゃんからも『ファイト』の文字が送られて来た。ネコの面白いスタンプ付きで。


『ありがとう。頑張ります!』


 少し気がほぐれたところに、慣れない名前がテロップに表示された。

 落ち着かなくなる心臓を抑えながら、ゆっくりとその名前を押す。湊くん。


『おはよう。コンテスト頑張ってね!』


 たった2行の文字だけど、日にちを知っていてくれたこと、連絡をくれたことが嬉しくて胸がキュンと狭くなる。

 胸にスマホを当てて、頑張りますと返した。