「結奈、凶出したの?」


 ソファーの背から覗き込むようにして、お姉ちゃんがおみくじを見た。


「祈願へ行ったのに、ついてないよね」

「凶のみくじはめでたいんだよ。大吉より数が少ないっていうから。凹んだとこから芽が出るってさ」


 こじつけにも聞こえるけど、プラス思考になればそうなのかもしれない。

 白髭神社に(まつ)られる龍。失くし物を見つけるかぁ。

 おみくじに書かれている和歌を、なんとなく目でなぞる。


 ーー散る花は また来ん春も咲ぬべし 別れはいつか 巡りあふべき。


 どんな意味なんだろう。
 ふと湧き上がった疑問は、お姉ちゃんの声によってすぐに消された。

 小さく折り畳んで手帳のポケットに戻すと、次の瞬間には頭からすっかり忘れ去っていた。