「あっちで龍が見れるよ」


 周さんの指差す方向に、木で覆われた本殿が見えた。悠久の年月を経た風貌が威圧感を増している。

 本殿へ続く参道の両端には、龍神である狛龍(こまりゅう)が出迎えてくれて。

 鋭い目に立派な髭。大きく開いた口から見える灯り。この顔に見覚えがあった。


「狛犬とか龍って、ひとつずつ顔が違うらしいね。ここのは、何かを飲み込もうとしてる」

「丸い光だね」

「穢れ、それとも魂かな」

「……たましい?」


 想像したら身震いが起きた。雰囲気のある場所だから、余計に不気味。

 あははと笑って、周さんが私の手を引く。
 初めて繋ぐ手。少しだけ動揺した。振り払う理由もなくて、握り返した指は変な気分。


「ゾッとした顔してる。大丈夫、ただの外灯だから」

「……うん」


 安心させるためにしてくれたんだ。

 本殿の鈴緒を鳴らす。心を清らかにして私たちは手を合わせた。


 ーーどうか、スイーツコンテストで良い結果が出せますように。