色素の薄い髪色とビー玉のような透明感の茶色い瞳、白い陶器のような肌。
 生まれて初めて男子を綺麗だと思った。

 ふと瞳が触れ合って、視線を外した私に予想外の言葉が降ってくる。


「そのお菓子……、僕にくれないかな?」


 空耳かと自分の耳を疑う。
 窓側で目の前にいるのは私だけど、他の子に向けられた台詞だよね?

 そのまま手元のラッピングを見ていると、風に乗ってまた声が飛んできた。


「えっと、鹿島さん……だよね?」

「は、はいっ?」


 裏返った声が、すでに熱かった頬をさらに赤く染める。
 ふと顔を上げた先、透明感のある綺麗な目とばっちり合った。わ、わ、わたし?


 ーー知らない男子に名前を呼ばれた。

 それだけで尻込みしてしまう。初めて会った人からお菓子を求められるほど、美味しそうに焼けていたのかな。


「ダメかな?」

「え、えっと……」


 たじろいでいると、周りから女子部員たちが集まってきて。


「星名先輩、甘いもの好きなんですか?」

「良かったら私の受け取ってください」


 すぐに囲まれた様子を見ながら、自分の中で納得する。この人が噂の星名くん。

 ありがとねと微笑みながら、彼はもう一度私を見た。


「そのお菓子が欲しいんだけど。ダメかな?」


 なんと反応したらいいの?
 とりあえず、「これは他に渡す人がいる」ことを伝えなくては。