スイーツコンテストまで、1週間あまりに迫った土曜の朝。
 お菓子道具の入ったエコバッグを片手に、慣れない家のインターフォンを鳴らした。

 迎えてくれたのは、ネイビーのシャツと黒の細身パンツに身を包んだ周さんだ。

 制服のスカートではない姿が新鮮で、中世的な雰囲気がより強調されている。
 女の子というより、どこか男の子を感じさせるモノトーンでシックな部屋が妙に緊張感を煽った。

 キッチンで肩を並べて、お菓子作りの練習をする。

 高見ちゃんも来られたら良かったのにな、と思いつつマジパンの生地を捏ねて、着色を施していく。

 隣からは、スポンジケーキの優しい香りが漂ってきて、幸せな空間だと身に染みていた。


「あとは、高見ちゃんのチョコレート細工乗せたら完璧だね」


 出来上がったケーキを机に置いて、周さんが取り皿とフォークを並べた。


「最後だし、賞取れるといいね」


 コンテストが上手く行ったら、自分に自信が持てる気がするの。