「なんか照れるね」

 空を飛ぶ鳥。遠くに揺れる緑。街の全てに音はなくて、私と彼の鼓動だけが動いてる。

 この瞬間、この空間だけ別世界みたい。

 今なら神様が見ていてくれるようで。勇気を出せる気がして。


「コンテストが終わったら、そしたら、私を……描いてくれますか?」


 黙っていても伝わらない。想っているだけでは、何も変わらないから。


「ぜひ描かせて下さい」

 呼び慣れない名前を口にして、どこかぎこちなくなる私たち。


 ーーずっと、結奈ちゃんが好きだよ。


 また想像の声が湧いて来る。
 この声は、湊くんに似ている。まだ、夢を見てるみたいだ。