「僕のために、作ってくれたの?」

「……はい」

「ありがとう」


 少し視線を落とす星名くんの頬は、ほのか淡く色づいていた。


「結奈ちゃんからお菓子貰ったって、樹が自慢してたから。ちょっと面白くなかったんだよね。僕の方が先に仲良くなったのになぁって」


 少し照れ臭そうに話を続ける目と触れ合う。


「僕にはくれないのかなぁって思ってたから、すごく嬉しいよ」


 心臓が奮い立った。夢見心地な気分に襲われて、意識が飛びそう。


「あの、今、名前を……」

「樹も名前で呼んでるから、僕も結奈ちゃんって呼ぼうかなって。ダメかな?」


 ダメなわけない。小さく首を振る顔から溢れそうになる笑みを必死にこらえる。

 抑えられるわけない。
 だって、お菓子と名前のダブルで下津くんに嫉妬したってことだと勘違いしてしまう言い方だったから。


「結奈ちゃんも、僕のこと名前で呼んでよ」

「はい……えっと、み、なとくん」


 うわ、すごく恥ずかしい。頬から熱が出て来る。