他クラスより一足先に帰りのホームルームが終わり、私は2組の教室へ向かった。

 階段の陰に身を潜めて、廊下の様子を伺う。いざその時になると、そわそわして足が宙に浮いてるような感覚。

 2組の生徒たちが帰り始めた。知らない顔に混じって、星名くんの姿が視界に入りる。そのあとを、こっそり追った。

 後ろ姿は反対側の階段へ向かう。あっち側は、ほとんど使われない通り。

 ひと気の少ない階段を上がって薄暗い空間へ着いた。屋上の扉だ。

 閉まり切る前のノブに手を掛けて、ドアをゆっくり押し開けた。
 澄み渡る青い空が広がるのみで、星名くんの姿は見えない。

 ーーバタン。足を踏み出すと、ドアが大きな鈍い音を立てて閉まった。

 びくりと体を逸らすと、人影が現れて。


「何してるの?」


 透き通る綺麗な声。白いカッターシャツが目に入る。

 すぐ目の前に、星名くんの端正な顔が飛び込んで来た。

 反射的に体が離れて、目から悲鳴が出そうになる。