「よく知んないけどさ、黙り込まれると困るんだよね。何考えてるか分かんないから。話してくれる気になったんじゃないの?」


 正論を言われていると分かっていても、声が出ない。間違えた反応をしたらと思うと、怖くて。


「ちゃんと言葉で伝えないと、人には伝わんないからね。心を読める能力があるなら別だけど」


 私だって、変わりたい。もっと自信を付けて、自分の思いを伝えられるようになりたい。


「話すことが、苦手で。緊張しちゃう……から」


 声が震える。心臓が尋常じゃないくらいバクバクして。
 ゆさゆさ、頭が揺れる。下津くんが犬を撫でるように私の頭をくしゃくしゃとしている。

 な、な、何が起こっているの?


「人って、そう簡単には変われないからね。少しずつでいいんじゃない?」


 その言葉は、さっき想像で聞いたそのもの。まるで、映画の予告が流れたみたいに同じだった。


「おまじない。よしよしされると、少し気が和らぐでしょ」

「そう……かもしれないです」

「これで俺には慣れたんじゃない? 一歩前進ってことで」


 重かった肺が、少しだけ楽になる。
 触れられる手が優しくて、拒否反応は出なかった。