「個人的にってことは、やっぱアレかなー」


 前のめりになった下津くんが、ずいっと私に顔を近付ける。
 その距離は15センチ定規よりも短くて、私は固まりかけた体を少しだけ退けた。

 ……アレ?


「ヌード」

「ぬ、ヌード⁈」


 至近距離で囁くように放たれた言葉。勝手に頭が良からぬ妄想をする。

 茹で上がったタコのような私を見て、下津くんは悪魔のように口角を上げてクククと笑いを堪えている。

 からかわれたんだ。少しムキになって残りのネオンジュースを一気に飲み干した。ピンクとブルーが合わさって、少しだけ甘酸っぱい。


「結奈ちゃんの反応が可愛いから、つい。ごめんね」

 ナチュラルに名前呼びされて、どう反応したらいいのか困る。

 会った冒頭から頭を過ってはいたけど、下津くんってやっぱりチャラい人だ。この人のペースに付いていけない。

 この机の半分側から、すでに境界線を引き始めている。


「血の気の無いような顔してるけどさ、アイツも普通の男子高生だからね。頭の中は何考えてるか分かんないよ?」


 シャーペンを指で踊らせながら、また彼を下げることを言う。


「星名くんは、そんな人じゃないと……思います」

 緊張に負けた声が、語尾に進むほど小さくなっていく。