ふと彼らの手元に教科書や参考書が置かれていることに気付いた。


「もしかして、勉強を……?」

「もうすぐ中間考査だしね。良かったら鹿島さんも一緒にどうかな?」


 そうでした。最近、色々とありすぎて存在を忘れていた。


「その顔は忘れてたな? そんな余裕ぶっこいてていいのかー?」


 そっと出されたノートとシャープン。

 星名くん、天使すぎて涙が出そう。
 下津くん、初対面でも容赦がない。

 苦手な英語を教えてもらうことになったのだけど、これがなかなか集中出来ない。
 特進科の彼らには容易いであろう問題を一緒に解いてもらうなんて。

 こんなだから、別次元の『生物』みたいに思われちゃってるのかな。同じ人間として恥ずかしい。

 すらすらと手を動かしながら、前からの視線が気になって仕方がない。

 なにやら下津くんがニヤついた顔で私たちを見ている。気が散って仕方がない。


「髪、すごく茶色いね。それって地毛?」


 頭を指差す彼に、緊張しながら「はい」と頷く。

 生まれつき色素が薄い体質で、私の髪や瞳の色は淡い茶色をしている。そのため、小学生の頃から毛染めしているとよく勘違いされていた。


「ふーん。こう並んでると、なんか同じ空気感だよね。君らって」


 ペンを回しながら、下津くんが不敵な笑みを浮かべる。