制服姿の星名くんが、目の前に立っていた。どうして、こんなところに?

 頭が追いつかないわりに、騒がしい夜の街に似合わない、と思った。

 駅前には、お洒落なカフェがたくさんある。きらきらしたジュースやふわふわしたドーナツとか、初めて見るものばかり。

 少し街へ出ると、すぐそこに青春と言う文字が浮かんでいるんだ。

 アンティークな椅子に座って、未知のネオンジュースを頼む手が震えている。

 ……一体、この状況は何だろう。


「鹿島さん、だっけ? 俺、下津樹(おりづいつき)。よろしくね」

 アイスカフェオレを飲みながら、目の前で気さくな笑顔を見せる人は、星名くんの友達らしい。

 黒髪の毛先はブリーチしていたのか色が抜けて明るい。無造作に跳ねた髪の隙間から、ピアスの跡が見えている。

 星名くんとは、真逆のタイプ。


「今、本当に友達かよって思った? ちなみに、俺も湊と同じ2組だよー」

「いえ、そんな事は……! ええっ、特進科……?」

 一度口から出してしまった言葉は取り消す事が出来ない。

 一瞬にして全身の血の気が引いていく。
 やってしまった。とても失礼な反応をした。