「湊くんとどういう関係? これ、あなたでしょ?」


 見せられたスマホ画面には、美術室の外から撮られた写真が写っている。
 画質が粗くて分かりづらいけど、星名くんと私だ。

 彼の指が髪に触れているから、モデルの話をしている時だと思う。どうしてこんなものが……。


「これ、何してたの? もしかして付き合ってるとか?」

「そ、それは違います」

「じゃあなに? すっごく腹立つんだけど。湊くん独り占めしないで」

「今、上の階ですっごく有名人なの知ってる? 普通科の鹿島結奈さん」


 どうしよう。きっと、星名くんに迷惑をかけている。何か弁解したいけど、上手く言葉が付いてこない。


「あのさ、それ、私なんですけど?」


 黙って聞いていた比茉里ちゃんが、間に割り入って口を開いた。


「バカなの? 髪の色も長さも全然違うじゃん」

「ウィッグだよ。学園祭でどんな演劇にしようかアドバイスもらってただけ。なんなら、星名くんに確認してみます?」

「もういい。なんか面倒くさくなった。行こっ」


 チッと舌打ちが鳴った。女の子たちはもう一度私の顔を見て、去り際の台詞を吐き捨てる。


「ああ、そうそう。モデル頼まれたとかで、浮かれてるとこ悪いけど。次の課題、【生物画】なんだって。知ってた?」

「まあ、せいぜい人間っていう【生き物】として頑張って」


 彼女たちの嘲笑う声が小さく消えていく。

 嵐が去ったような通路に立ち尽くして、震える手が夢ではないことを知らしめた。